アイラブユーは君だけさ

だいたいそんな感じ

一本気野郎を追いかけて

去年、ABC座に呆れるほど通い詰めるたびにブログに自分の観たものを残そうと必死になっていた。

自分がまだどういう立ち方をすればいいのかわからなかったというのが主な理由だった。A.B.C-Zを応援すると決めてすぐにそんなにも彼らを観る機会があった事を良い事としていいのか、わかっていなかった。ただ観たものはすぐに記憶からこぼれていってしまうから。後から見返すことが出来るものを自分に用意しておこうと思ったのだった。

 

だからメモを使用したり、繰り返し観れば記憶も刷り込みのように正確になっていくもので覚えていられる事は、何もしないよりは全然マシだと言えるくらいに「読み物」としてブログであったり、ツイートであったりで残っている。読めば、その時自分がどう考えたか、どう観たかをその時ほど実感できなくともただ一から思い出すよりは良い。

 

 

2015のABC座を必死に書き留めていたから、2016のABC座も同じように書けるものとなんの疑問もなく思っていたし、実際そうして後の自分へ残してやろうと思っていた。

初日に縁あって観劇できる運びとなり、観客として真っさらな状態で日生に向かった。

 

そしてそこで、黒丸桂馬に出逢った。

 

わたしはABC座2016 株式会社応援屋を言葉にして残そうとする事は出来ないとわかった。努力でどうなるものではなかったし、どうこうしようと思うこと自体馬鹿げていた。

 

だって、どう足掻いても桂馬さんを自分の観たまま言葉にする事なんて出来ないのだ。

一度日生の椅子につき、カキンと野球ボールが空に吸い込まれるような音がすれば、その瞬間からただもう舞台から目が離せないのだから。

 

 

まだ公演の真っ最中であるし、わたしも語る言葉を自分のなかに見出せないので桂馬さんに対してもABC座に対しても細々した事を書き連ねることはないけれど。

去年、今年と観ていて思ったことがあったのでそれならば今この時に記しておけるかなぁと思って書くことにした。

 

五関さんは、ステージで俄然生き生きとする。物言わぬ木のような風情で普段はそこにいるのに、ライトが煌々と照らすその下では溢れんばかりの生命力を真っ向からぶつけてくる。

 

桂馬さんというその人は、静かそうに見えても内側は熱く闘志が燃えている。将棋というゲームを詳しく知っているわけではないけれど、劇中のセリフでもあるようにイメージとしては地味だ。

五関さんが棋士というのは驚くほどしっくりきていたけど、その棋士というのをステージ上であんなに見事に演じてみせるとは、五関さんって凄いなぁ…とかここにきてアホみたいな言葉しか出てこないんだけれども、ただただ、その地味でしかなかったイメージをあんなにも覆してしまうのは桂馬さんがビジュアル的に格好良いからというだけでは無いんだと思う。

 

五関さんという人は、去年も同じようにぼんやり感じていたけれども、あんまり演技の最中にイレギュラーな事をしないなぁと思う。

他のメンバーがそれなりに毎公演、違った風にセリフを口にしたり、動きを変えたりするのに対し、五関さんはそういう目新しい動きをしない。

セリフを変えたりするのも、加えたりするのも他メンバーに比べると余りない。ジャニーズでない演者さんに近いように感じた。

そういう五関さんだから、桂馬さんの気持ちの昂りを観ていると凄いなと思うのだ。そういう演技をしているのだから当然かもしれないけど、桂馬さんを観ている最中は五関さんの事を思い出さない。ちょっとした仕草も五関さんではなく桂馬さんなんだ。

演劇のなんたるかとか、演技の上手下手はわたしにはわからない。だから五関さんが上手いのかはわからない。でも、好きだ。自分が五関さんの演じている姿が好きだということはわかる。

バーカウンターにやや傾いだ姿勢で見える背中も、長い脚を伸ばし爪先をトントンと遊ばせているのも、駒を指しては首を振るその仕草ひとつとっても、好ましい。

 

桂馬さんの演技が、ついこないだとは違っていた。先日の観劇での事である。18日と21日では、全く違った。ベースは同じであったけれど、台詞の間だとか、言い回しのニュアンスだとか。それは新しい桂馬さんではなくて、素の桂馬さんに見えた。台詞が詰まってしまう瞬間もあったのだけど、桂馬さんは変わったけど変わっていなくて、そのどちらの面も掛け値無しに好きだった。

 

恐ろしいほど頰の陰が濃くなっていっても、桂馬さんの笑顔は清々しくて眩しい。

鬼気迫る殺陣に涙しても、あの瞬間の笑顔で何もかもまた真っ白だ。

 

五関さんが桂馬さんでいる舞台を、あともう少しだけ観ることができる。どの瞬間も逃したくない。ステージの上で苦悩して、笑顔を浮かべる桂馬さんから目を逸らしたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ショータイム、A.B.C-Zの五関さんがあまりにも楽しそうで。ああやっぱり、桂馬さんと五関さんは単純なイコールではないのだと、毎公演ハッとするんだ。