アイラブユーは君だけさ

だいたいそんな感じ

希望に向かう背へ


わたしはVが好きだ。

 

曲調が単に好みだということがまずその理由。
戸塚さんのソロ曲って、もうドラマで叫んでるイメージしかなくて。ドラマは曲として凄く好きだったけれど、演出というか、それは個人的には全く好みではなくて逆に好感が持てるくらいだったんだけども。
Vを初めて聴いたとき、あまりにもその音が心地良くて驚いた。
戸塚さんの歌い方も、声に表情が出ているように感じて。これがコンサートで可視化されるのがとてもとても楽しみになった。

元からどんな曲でも歌詞は一番最後に、後回しになってしまいがちで。音として聴いていて楽しいかそうでないか、がわたしが音楽に対して好き嫌いを判断するものになるから。だから、今回のアルバムでぶっちぎりに好きな音をしていたVだからこそ、一番最後に歌詞を見た。

歌詞を読んだときは「なるほどこんな事を歌っていたのか」と思った。戸塚さんの中のかつての澱が、良い風に昇華された曲なのかなぁ…みたいな薄い感想しか抱けなかった。
歌詞を重要視するより、曲のテンポや音の心地よさばかりを気にしていたように思う。


コンサートでのパフォーマンスを観て、ようやくその歌詞がじんわり沁みてきたような気がする。
ギターを持って出てきたのを見た瞬間は、もしかするとギターでの演奏での披露なのかな?と思った。正直に言うと、それはあんまり望んでいなかったから、ちょっとだけ気落ちしたかもしれない。
でも、歌い出しを聴いて、ライトがステージを舐めるようにして空へ放たれて、まっすぐに会場を照らして。
戸塚さんがギターを置いた。
あの、大好きなイントロが流れてきて、ああVはやっぱりこれだと思った。

戸塚さんがステージの上で間違いなく主役としてVを歌いながら踊っていた。本当に表情が楽しげで、つられてわたしも笑った。でも、会場で大きな音で聴く音は普段ウォークマンで耳に流していたそれよりもずっと切なくて、でも歌う、踊る戸塚さんを見ながらだと普段聴いているよりずっと楽しくて。
不思議だなぁと思った。戸塚さんの曲は生きているなぁと感じた。


その時代をリアルタイムで追いかけていなくとも、語る言葉を聞けば、読めば、戸塚さんが思うジャニーズ人生はきっと楽しいだけではなかったんだと思う。
楽しいだけではないその、悔しさとか、羨望だとかを、燻らせていたこともあったかと思う。

30代への道を歩いているなかで、今年それが一番良い方法で、最善のやり方で消化出来て、それがVになったんじゃないかなぁ、なんてことを漠然と感じた。

戸塚さんという人を、なんとなくだけど、弱みを見せたくない人なのかなと思っていた。
どんなに痛くても痛みを見せたくないというような。傷があっても平気な顔をしていそうだ、とか。
見せないというポリシーを格好良いものとしている、というか。言葉にするのは難しいなぁ。

ドラマを聴いたら、まだその思考の真っ最中だったように思える。
Vは、間違いなくそこから一皮向けている、脱皮して新しい姿で羽ばたこうとしているその様だと思えたんだ。


わたしは若い時に凄く辛い事ばっかりあって、思い悩んで、肩の力入りまくりで、視野が物凄く狭かった。
今日駄目だったらずっと人生駄目なまま、みたいな極端な思考だった。明日があるから、なんて気楽なこと言ってられないって思い込んでいた。

20代を少し過ぎたあたりから、なんとなくふっと視野が広くなった気がして、そこからは一気に楽になった。
自分のこと許せないところばかりで、嫌いだと思っていた。だけど、不意にそういう自分もなんとなく許せて、そうしたら嫌いだと思っていた部分を好きになってきた。

勿論まだ全部を許せたわけではないし、全部を好きになれたわけじゃないんだけども。


Vを聴いて歌詞を読んだ時に感じたのは、自分がそうやって気持ちの変化があった時のような感覚で。
だから、良い意味で、戸塚さんは過去の自分を許して、好きになれたのかなぁと。
そういう自分をありのまま歌ったのかな、と。


わたしはその辛かった時期に一人だったけれど、戸塚さんにはその時は見えていなかったかもしれないけれどこれからも前を一緒に向いていけるメンバーがいるから。
だから、きっと大丈夫だ!って。それが希望なのは自分一人だけではないんだってわかったんだ、って事に聞こえるから。

自分云々は別においてもVは良い曲だ。春の浮かれた気分と強い風にも、夏の照りつく陽射しと汗の匂いにも、秋の夕暮れと散歩道にも、冬の凍てついた空気と澄んだ高い空にも合う、いつ聴いてもきっとその時々に色々なことを感じることが出来ると思う。
どんな時期に聴いても、きっと自分を少しだけ優しく許して、力強く前を向くことを促してくれる曲だと思ってる。

わたしにとって今年出逢った新しい曲で一番好きな曲だと思うし、戸塚さんの29歳から30歳に続く道のりの中できらきら輝く通過点を美しく切り取った曲だ。


イントロからずっと少しだけ泣きたくなるような音を含んだVが、戸塚さんの声で揺らぐことない希望で締め括られ、跡を濁さないというように空を仰ぐように終わる、そんなところが好きだ!

 


戸塚さん、30歳の誕生日おめでとうございます。
30歳の視野に広がる世界が、美しく楽しいものでありますように!